空き家対策条例 「体罰」問題
2014年(H26)3月市議会 一般質問
◎空き家対策条例
◎体罰問題
14番(中島満議員) 私は、まず、議案第26号 南砺市空き家等の適正管理に関する条例の制定についてお聞きします。 いわゆる空き家対策条例は、平成22年7月に埼玉県所沢市で初めて制定されて以降、国交省の調査では、昨年4月の時点で211自治体に広がっています。 空き家の発生原因は、居住者の死亡や転居、相続人が居住していないなど、さまざまなものが考えられます。また、住居可能な空き家は、自宅に対する愛着や、他人が住むことに対する抵抗感があったり、空き家に家財道具や仏壇が残っていたり、地域によっては買い手や借り手の見つかる見込みがないために、流動化が進まないとされています。 居住者がいなくても、所有者による適切な管理が行われていれば、空き家が周囲に対して悪影響を及ぼすことはありません。しかし、空き家の所有者が遠方に住んでおり、管理意識が低い場合や、相続を契機に管理責任が不明確になる場合などは、管理不全に陥りやすくなります。また、自治体が適切な管理を求めようとしても、登記簿等の情報が更新されておらず、所有者やその連絡先を確認できず、対策がおくれることがあります。 老朽化が進み、周囲に悪影響をもたらす危険が非常に高い空き家については、最終的には撤去する必要があります。しかし、跡地の使い方が定まらない限り、所有者にとっては撤去費用を負担してまで解体するメリットは乏しく、また、それ以外にも所有者が空き家の撤去をちゅうちょする原因があります。その一つが、空き家を撤去した場合、土地にかかわる固定資産税がふえることです。地方税法第349条の3の2では、専ら人の居住の用に供する家屋が建設されている土地の固定資産税は、家屋1棟当たり200平方メートルまでは本来の6分の1、それ以上の部分は本来の3分の1に軽減されます。この規定の適用に際しては、家屋の老朽度合いや居住実態等は考慮されておらず、家屋が空き家になっていても、当該土地に係る固定資産税が3から6倍にふえることになり、撤去後の土地の利用や売却の見込みがない場合、所有者は空き家の撤去をちゅうちょすることになります。 また、建築基準法第3条第2項における既存不適格建築物や、第43条第1項を満たさない無接道敷地に関する問題もあります。建築物の敷地は、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接する必要があるという規定があります。そのため、建てかえや大規模の修繕等に際して、現行の法規定が求められます。また、道路幅の拡張が必要になるため、撤去後の土地の活用が困難となるため、所有者は撤去をちゅうちょすることになります。 新年度の予算要求では、関係機関と相談し、改善を図られたいと申し入れたところですが、改めてこの点についてどのように考えておられるのかをお聞きいたします。 いま一つ、代執行についてです。空き家対策条例に代執行を規定している自治体は、211自治体中59とのことです。実際に代執行されたケースは、秋田県大仙市が24年3月に行った以外にありません。そもそも法的には行政代執行の条例規定は、あくまでも行政代執行法の確認規定であり、それがなくても代執行は可能とされています。代執行を条例に規定する自治体がある一方、多数の自治体は個人の財産権の侵害となることを危惧し、あくまで所有者との合意に基づいて解決することを目指しています。代執行を行った大仙市の事例では、撤去費用約178万円を所有者に請求していますが、資力不足のために回収の見込みが低いのも事実です。 条例の制定は、内容以外に、「空き家」を名称に冠する条例の制定による効果もあります。空き家の所有者の問題に対する理解の促進、縦割り行政のすき間に落ち込みがちな空き家問題に対する担当部署が決まること、市民に対する周知効果も上げることができます。あえて代執行を規定して所有者に臨むことを、住民に宣言することが適当とされた思いをお聞きいたします。
次に、体罰に関してお伺いします。 文部科学省は、昨年8月、大阪市立桜宮高校の体罰自殺問題を受けて、全国の小・中・高校などに指示した体罰実態調査の最終結果を公表しました。平成24年度に体罰をした教職員は、国公私立計4,152校の6,721人で、被害を受けた児童生徒は1万4,208人に上りました。 この調査は、初めて保護者や子供へのアンケートなども実施した結果で、把握が難しかった体罰が大幅にふえたと見られています。公立校が対象の従来の調査では、体罰で懲戒などの処分を受けた教職員は年400人前後で推移しており、16倍以上に跳ね上がりました。6,721人は全教職員の0.58%で、内訳は中学校が2,805人で最も多く、高校が2,272人、小学校が1,559人とのことです。小学校では授業中に6割が集中する一方、中高では部活動が4割で最も多く、授業中に2割余りとしています。 富山県内では、公立小・中学校と高校で教員50人が体罰をしたとし、被害を受けた児童生徒は小学校が19人、中学校が52人、高校が68人だったとしています。 体罰は絶対に許されません。学校教育法の11条では、体罰を加えることができないと明記しています。子供の人権を侵し、脅して萎縮させるものであって、教育とは相入れません。体罰に関しての見解を伺います。 また、体罰とスポーツに関して伺います。 近代スポーツの発生は、19世紀の産業革命によって、豊かさと余暇を手に入れたイギリスに起こると言われます。その背景には、前提として民主主義があります。人間には、生物としての闘争本能や競争心がありますが、スポーツは闘いや争いといった暴力行為をルール化・非暴力化し、ゲーム化した遊びでもあります。人生が生んだ偉大な文化であります。つまり、スポーツは暴力の否定から生まれたという理解に立てば、スポーツの世界で体罰という名の暴力が存在すること自体、全く理解しがたいことであり、スポーツの場において体罰を容認するなどということは許されるはずがありません。 スポーツが日本に伝わってから、既に150年もの時が経過しています。しかし、スポーツへの無理解がはびこっている根本には、スポーツと体育を混同してしまったことにあります。体育は、学校教育の一環として身体を鍛えるというものであり、それが人間育成の方法論である限りにおいては、固有の価値を持ちます。しかし、体育は好き嫌いにかかわらず受けなければならないカリキュラムであり、当然のこととして達成目標が設けられます。 スポーツは、本来、自発的に楽しむものであり、本質的に誰からも強制される筋合いのものではありません。スポーツと体育とは本質的に別物であるにもかかわらず、日本ではそれを一貫して混同してきました。戦前の日本では、スポーツの多くが厚生省の管轄下にあり、国民の健康と体力・体格を向上させて、優秀な兵士・国民軍をつくり上げるという厚生省の目的に合致していました。 昨年8月、厚生労働省はパラリンピックにかかわる一部の事業を文部科学省に移して、ことしから事業を一体化することに決まりました。本来、スポーツにおいて絶対に否定され、排除されるべき暴力が、我が国では体罰として容認されてきました。そもそもスポーツの指導に罰など必要はありません。試合での敗北は、その敗因を考え、分析し、次の試合に備えて新しい戦術や練習方法を編み出す成長の機会で、そのように導くのがスポーツの指導者の努めです。 桜宮高校の事件が表沙汰になって以来、さまざまな高校や中学校で、体罰事件とその隠蔽事件が次々と表沙汰になりました。そして、女子柔道の国内トップ選手たちが、ロンドン五輪に向けて強化合宿で代表監督やコーチから暴力や暴言などのパワーハラスメントを受けていたことまでが、JOCへの告発文書で明らかになりました。 このような事件が表沙汰になるたびに、「昔は体罰など当然だった」、「我々はよく殴られた」、そして、「愛情ある心のこもった体罰と暴力は違う」、「理屈を言うな。体で覚えろ」というような言葉が、スポーツに対する理解を否定し、体罰を肯定する出発点になっているとも言えます。過去のスポーツの歴史をさかのぼれば、あらゆるスポーツが基本的に非暴力という民主主義の大前提となる思想から生まれたことが理解できます。スポーツの場における体罰は許されるか否かなどという体罰是非論など、そもそも論外であります。さきの調査でも、部活動における体罰が多くを占めています。 そこで、スポーツ、部活動と体罰についての見解をお伺いし、私の質問を終わります。
市長(田中幹夫) 中島議員の質問にお答えをいたします。 建築物の敷地と道路についての質問は建設部長から、また、私も体罰はあってはならないと思っておる一人でございますが、体罰についての質問は教育長から答弁をいたします。 議員ご指摘のとおり、地方税法の規定により、住宅用の土地は固定資産税を軽減する特例措置が適用されております。200平米以下の住宅用地は、小規模住宅用地として価格の6分の1の額となり、200平米を超える分については、価格の3分の1の額となります。このことから、家を解体して更地にしますと特例措置の適用はなくなりますが、宅地の負担調整措置により、最大で4.2倍の税額になります。しかし、この規定は、固定資産評価基準に基づいて住宅として評価される家屋について適用されるものであります。朽ち果てた家屋については、たとえ取り壊さなくても特例措置の適用はなされないものであります。平成24年度に行った空き家実態調査の中で、倒壊のおそれのある危険家屋12棟については、9棟は既に固定資産税の軽減の特例の適用はされておりません。 現在、税の公平性の観点から、地方税法の規定に基づき課税を行っているところであり、適正に管理されていない空き家を解体した後、数年間固定資産税を軽減するといった自治体独自の措置も考えておりません。しかし、空き家対策は全国的な問題であります。今後、国、県等関係機関の動向を十分注視をしていきたいと考えております。 続きまして、南砺市空き家等の適正管理に関する条例に代執行を規定して所有者に臨むことを、住民に宣言することが適当とした理由についてお答えをいたします。 議員ご指摘のように、代執行につきましては条例に規定を設けなくても代執行ができないわけではございません。行政代執行法の規定により行政庁が命じた行為について、義務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められたときに、当該行政庁は代執行をなし、その費用を当該義務者から徴収することができることになっております。 したがいまして、空き家対策条例に定めなくても、代執行を行うことができるわけですが、やはり市として空き家対策を進めていく上で、管理が全くされずに周囲に危険を及ぼすおそれが非常に高い空き家の所有者に対しては、毅然とした対応をとるという意味で、今回、あえて代執行の規定を条例に設けたところであります。これにより、所有者のみならず、市民の皆様へも強いメッセージを送ることになると感じております。また、代執行の規定を設けることで、市民の皆様からの情報提供から始まりまして、代執行までの一連の流れが条文全体の中で確認できますので、市民の皆様がごらんになっても理解しやすいという利点もあると思います。 さて、空き家対策は、まずは適正に管理していただくことが第一と考えております。その後、可能なものは売り家、貸し家など利活用につなげることが最善と考えており、それが定住促進や人口増対策につながるものと思っております。市といたしましても、所有者の方に対して適正な管理に関する指導や利活用へのアドバイスを行いながら、積極的に空き家対策を進めるものであり、新年度では新たに担当課を設置して重点施策として取り組んでまいります。 議員各位におかれましては、市内、地域の空き家に関する情報をお寄せいただくほか、空き家を求めておられる方への情報を提供いただくなど、今後とも市の空き家対策についてご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
建設部長(浦田昭一) 私からは、建築物の敷地は、原則幅員4メーター以上の道路に2メーター以上接することが必要、接する必要があることに対する考えはとの質問にお答えいたします。 議員ご案内のとおり、建築基準法第3条第2項の既存不適格建築物は、法律が施行される以前から存在している建築物であり、現状では適法とみなされますが、建てかえや大規模修繕等の建築行為を行う場合、既存の部分を含めて建築基準法が適用されることになります。また、建築基準法第43条第1項で規定する敷地への接道義務は、都市計画区域内におきまして、安全上、防火上、衛生上の観点から、通行確保のため建築物の敷地について、幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接することを求めております。 議員ご指摘のとおり、新築の場合はもちろんでありますが、建てかえや大規模修繕等におきましても接道義務の規定が適用されるため、土地の活用が難しく、所有者が撤去をちゅうちょする要因になっていると思われます。しかしながら、建築基準法は、国民の生命、健康及び財産の保護を図るため、建築物が一定の水準を保つように各種の制限をしております。空き家を撤去した敷地につきましても、建築基準法の適合が求められるものと理解しております。 なお、南砺市空き家等の適正管理に関する条例は、所有者等に空き家の適正な管理を促すことを目的としているものであります。条例の施行に当たりましては、当然のことながら建築基準法等関係法令を遵守し、進めてまいりたいと考えております。
教育長(高田勇) それでは、私のほうから、まず、体罰に関する質問についてお答えいたします。 議員ご質問のとおり、体罰は児童生徒に対する人権侵害であり、どんな理由があろうとも決して正当化できない行為であります。したがって、児童生徒を指導するに当たっては、教員は、いかなる場合であっても体罰を加えることはできないことは当然のことかと思っております。問題行動を行った児童生徒に対し、教育的必要があると認められるときには、心身の発達を十分に考慮して行われる懲戒がありますが、これと体罰とは根本的に全く違うものであります。したがって、体罰は、人権を侵害する行為として学校教育法で禁止されております。これは議員のご指摘のとおりでございます。 体罰は、児童生徒の心理面や学習面、児童生徒と教職員との人間関係に重大な影響を及ぼすだけでなく、心身に癒やすことのできない傷跡が残り、これがいじめや不登校等に発展する場合もあります。体罰を行った教員だけではなく、学校全体に対する保護者の不信感が増し、地域全体の信頼を失うことにつながっていくと思っております。子供たちは、皆、楽しく学びたい、授業がわかりたい、あるいは友達をたくさんつくりたいという思いを持って学校に入学し、日々希望を持って学校へ通っているわけです。教職員は、子供たちのこの純粋な気持ちにこたえるべく、一人一人が意欲を持って学校生活を送れるよう、指導や支援に努めることが重要であると考えております。 各学校では、教職員一人一人が高い人権意識を持って児童生徒の指導を行い、体罰のない学校を目指して取り組んでおります。今後とも、児童生徒とのよりよい人間関係、信頼関係を基盤に、一人一人の児童生徒が学ぶ楽しさを実感し、来るのが楽しいと感じる学校をつくっていきたいと考えております。 次に、スポーツ・部活動と体罰についてお答えいたします。 スポーツは、人々が生涯にわたり心身ともに健康で豊かな人間性を育む基礎となるもので、自発的な運動の楽しみをもとに、障がいの有無や年齢、男女の違いを超えて運動の喜びを分かち合い、感動を共有し、きずなを深めることができるものであります。学校における運動部活動は、児童生徒が小さいころから取り組んできたスポーツや、体育の授業で身につけた技能等を発展・充実させ、生徒の自主性、協調性、責任感、連帯感などを育成するものであります。そのどちらにも、体罰を指導の手段とすることは決してあってはならないと思っております。 特に、心身の成長過程が激しい時期にある中学生・高校生にとっては、部活動は学年の枠を超えて体力、運動能力を向上させるとともに、相手を尊重し、互いに協力し、助け合う、そういう心あるいは公正さ、規律等を学ぶ、あるいは克己心、こうしたことが培われる大切な場であるかと思っております。人間性の基礎となる部分が、この部活動で養われるのではないかなと思っております。したがって、体罰が行われてこうしたことが損なわれるようになると、大変大きな問題があるかと思いますので、体罰は決して許されない行為であると考えております。 フェアプレイや相互尊重の精神、ルールを尊重することを前提として行われるスポーツのあらゆる場において、体罰は不必要でございます。これからも、スポーツや運動部活動においては、指導者や関係職員がスポーツ活動の意義を十分理解した上で、勝利至上主義に走らず、適切な内容と指導方法によって、充実した活動が行われるよう指導してまいりたいと考えております。 私からの答弁は以上でございます。