「自治体消滅」論の狙いはなに?
南砺市は「消滅可能性都市」
日本創成会議(座長・増田寛也元総務大臣)が2014年5月8日に発表した「ストップ少子化・地方元気戦略」(増田レポート)で、若年女性人口が2040年までに5割以上減少する自治体を「消滅可能性都市」(896自治体)、うち人口1万人未満の市町村を「消滅自治体」(523自治体)と名指しして自治体名を公表しました。そのうえで、「消滅」が避けがたい自治体では周辺にある地域拠点都市との連携をすすめ、その拠点都市に行政投資や経済機能の選択と集中をすすめるべきだとしました。
若い女性の人口減少率が50%を超えたとしても、絶対数としては若い女性は大勢いますし、かつそれ以外の年齢層の女性や男性もたくさんいます。若い女性だけをとり、その人口が半減するから自治体が消滅するというのはかなり飛躍した議論です。
この増田レポートを、マスコミはこぞってセンセーショナルに報道しました。そして、地方自治体の危機感を煽りながら、安倍内閣は「地方創生」を重点施策として打ち出すにいたりました。
「自治体消滅」論に対する反応には、3つの類型があるようです。
1つは、政府の進める自治体の集約化・統合、合併を選択せざるを得ないという「諦め」の考え方。
2つめは、4兆円にもなるといわれる人口減少対策・地方創生関連予算枠に期待して、獲得できれば財政運営がうまくいくのではという「期待」型。
3つめは、「警戒と批判」です。「平成の大合併」時代に自律の道を選択した町村では、かつての「西尾私案」(2002年11月)の再来ではと警戒するものです。
「西尾私案」は、「小規模自治体を、なかば強制的に整理し、近隣の都市自治体に補完してもらうか、都道府県に補完してもらうという選択肢しかない」というものでした。
自治体を集約化し、都道府県を廃止して道州制を導入することは、第1次安倍内閣のときから、安倍首相が市町村合併の次に進めたかった政策です。
「自治体消滅」論のもとで急浮上してきたのが、「地方創生」という政策です。「地方」は「中央」に対比した言葉です。中央政府からみた「地方」で、まさに上から目線の言葉です。「地方創生」は、今年春に予定されている統一地方選挙を意識したものです。
「自治体消滅」の脅迫(ムチ)と、「地方創生」予算(アメ)をちらつかせながら、地方分権改革、地方行財政改革、TPP(環太平洋経済連携協定)の先駆けといわれる国家戦略特区、そして道州制の前提となる「自治体集約化(地方拠点都市など)」といった個別政策が一体のものとして方向づけられようとしています。