2013年(H25)9月市議会 一般質問 9月12日
◎小中学校の就学援助
◎利賀ダム問題
14番(中島満議員) 私は、まず小・中学校における就学援助についてお伺いします。
無償とされている義務教育の小・中学校においても、学校教育に多くの保護者負担があります。経済的な困難な状況があっても、子供たちがお金のことを心配しないで学校で学ぶために、国民の権利としてあるのが就学援助です。
就学援助を受ける小・中学生は、1997年、平成9年には78万人、小・中学生の6.6%だったものが毎年ふえ続け、2011年、平成23年には過去最多となり、全国で157万人、小・中学生の15.6%となりました。
約6人に1人の小・中学生が認定されています。背景として、子供のいる世帯の所得の減少が考えられます。
文部科学省の子どもの学習費調査によれば、保護者が負担する学校教育費に大きな変化はありません。
なお、塾などの学校外教育費までを含むと、相対的に家計における教育費負担がふえていると考えられます。
学校教育法第19条では、経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童、または学齢生徒の保護者に対しては、市町村は必要な援助を与えなければならないとしているように、就学援助は生活保護基準に該当する要保護者と市町村がそれぞれの基準で認定する準要保護者に対して行われます。
就学援助の認定者数も給与額も、大部分が準要保護ですが、重要な点は、準要保護の認定基準、申請方法や就学援助の給付内容などの運用は市町村が決め、市町村ごとに違うということです。
就学援助の保護者への給付額については、国は定めていませんが、多くの自治体は国が市町村へ国庫補助する項目や額を算定する際の基準を参考にして決めています。
また、市町村の中には、独自の措置で給付を充実しているところもあります。
認定基準も、市町村ごとにばらばらです。準要保護の認定に客観的な数値基準を用いている市町村の多くは、世帯の収入を認定基準とし、おおむね生活保護基準1.0倍から1.5倍の間で認定しています。
平成24年度決算の主要施策報告書では、小学校では137人、中学校では89人となっており、合わせて226人であります。この数字は、合併以来、最も多くなっています。
そこで、25年度の小学生、中学生の認定者数と認定者の割合を伺います。
また、PTA会費など、市独自が行っている措置はどのようなものがあるのか、そしてその給与額はどれくらいかを伺います。
また、準要保護の認定の基準についてでありますが、南砺市では生活保護基準の1.2倍とのことです。小矢部市は1.5倍としており、認定されている生徒の割合は、小学生で約5.6%、中学生で約9.8%、合わせて約7%の児童・生徒が対象となっています。
南砺市では、小学生が約5%、中学生が約6%で、合わせても5.3%とのことでした。
そこで、近隣、あるいは県下の市町村では、それぞれ生活保護基準の何倍となっているのかを伺います。
また、私は南砺市も小矢部市のように1.5倍まで引き上げることが必要と考えます。そして、1.5倍とすれば、どれくらい対象者がふえるのか、また給与額はどれくらいふえるのかを伺います。
また、市町村の中には就学援助を活用していくことに消極的な自治体もあります。平成17年に準要保護に対する国庫補助が廃止され、一般財源化されたことにより、国庫補助金が要保護に対するものだけになりました。
国は、市町村に準要保護に対する国庫補助を廃止しても、地方交付税を算定する際の基準財政需用額に算入しているので、準用保護者に対する就学援助事業について、適切に実施することと通知しています。
しかし、平成19年度で見ても、国庫補助を含めても市町村が給付した就学援助額の31.4%しか財政措置はしておりません。
就学援助制度を充実させるためには、準要保護への国庫補助の復活をさせるとともに、現在の就学援助認定状況などにあわせ、国庫補助金の予算額の大幅な増額、地方交付税の積算単価の引き上げが必要であります。
就学援助は、教育の無償が完全に実施されていない現在では、大切な制度であります。国に対し、あらゆる機会に十分な財政保障を求めていただきたいと考えますが、見解を伺います。
あわせて、生活保護基準の大幅引き下げとともに、就学援助費に対する影響であります。
基準の引き下げによって、所得は変わらないために、就学援助から閉め出される危険もあります。市では、そのような該当者はいないのか、また国に対して、生活保護基準の引き下げに連動して利用者に影響が出ないよう、財政措置を行うよう要請すべきと考えますが、見解を伺います。
次に、利賀ダムについてお伺いします。
私は、これまで4年前の平成21年の9月議会で、利賀ダム建設とイヌワシ、クマタカなど、猛禽類への影響について、一般質問で取り上げたのを初め、3年前から一般質問、予算特別委員会で庄川の治水効果や地すべりの懸念について、何回も取り上げてきました。
また、日本共産党の県議会議員と呉西地区の地方議員で、専門機関である国土問題研究会に利賀ダム計画の調査と庄川の治水対策の検討を平成21年の11月に依頼し、現地調査や利賀ダム事務所や国交省、パレット富山での調査、交渉、住民を対象にした学習会に取り組んできました。
そして、ことしの3月に利賀ダム計画(富山県)の問題点に関する調査報告書が完成し、手元にいただいたところでもあります。
庄川水系の治水計画における利賀ダムの果たす役割についてでありますが、目標流量4,200立方メートル毎秒を設定している河川整備計画においての水位低下効果が雄神地点で約10センチメートル、万葉線橋梁地点で約8センチメートルにすぎず、基本高水流量6,500立方メートル毎秒では、雄神地点で31センチメートル、万葉線橋梁地点で45センチメートルにすぎないことが明らかになっています。
これも国土問題研究会がパレット富山に対し、平成21年11月18日に質問したのに対し、12月10日に回答したことにより、明らかになったものであります。
庄川の水害で一番大きかったのが平成16年10月の台風23号の被害です。大門観測地点で危険水位約7.01メートルに対し、観測史上最大の水位7.68メートルを観測し、避難勧告が出されました。
仮にそのときに利賀ダムがあっても、水位低下効果が10センチメートルですから、7.68メートルが7.58メートルになるにすぎず、避難勧告を出さざるを得ないのであります。
それでも利賀ダムの水位低下効果、治水効果があると考えるのかを伺います。
また、地すべりの懸念についてであります。
利賀村の全ての集落が地すべり地帯です。特に大豆谷地区は、過去に3度も大きな地すべりが発生したところです。上空からの写真を見れば、滑落崖の延長が2キロメートルにも及び、高度差が100メートルもある巨大地すべり地形であることが一目瞭然であります。
昭和40年代には、年間20から30センチメートルの移動量があり、昭和60年代以降、集水井の設置など、地すべり対策として14億円もの事業費をかけて効果を上げてきているわけであります。
集水井工は地下水を抜くことにより、摩擦力が低下し、地すべり面が動きやすくならないようにするのです。しかし、ダム湖をつくればまた土台を水びたしにして地すべりを誘発しかねません。
平成15年3月に完成した奈良県の大滝ダムでは、完成後の試験湛水で地すべりが発生し、37戸の集落が丸ごと移転しました。大滝ダムは事業費は当初230億円でしたが、3,210億円に増大し、さらに地すべりの追加対策で430億円が投じられています。
地すべり地帯におけるダムはご法度であります。
治水は下流域の問題ですが、地すべりは南砺市農業住民に直接かかわる問題であります。あらゆる機会に地すべりの対策の状況をただすとともに、万全の対策をとるよう国・県に強く要望されることを求めます。見解を伺います。
いま一つ、猛禽類の保護について伺います。
昨年6月の新聞報道によれば、県内のイヌワシが激減し、平成12年に策定された県の保護指針に記載された21から30ペアの52から70羽に比べ、6ペア、15羽程度と3割以下に減少しているとのことです。
県の保護指針では、平成10年の時点でAランクの21カ所のうち6カ所は営巣地が特定されており、そのうち4カ所は県南西部としていました。
利賀ダムの自然環境検討委員会(猛禽類)でも、イヌワシが3ペア利賀村周辺に生息しているとし、飛翔が確認されていました。しかし、残念ながら利賀ダムの建設とは関係はありませんが、イヌワシがいなくなったと思われます。
そこで、クマタカについてであります。
平成12年の報告書では、クマタカが5ペアの生殖、繁殖が確認され、事業による影響が予想されるのは4ペアあるとしていました。そこで、クマタカの調査結果はどのようになっているかを伺います。
国土問題研究会の報告書でも、庄川の治水計画と利賀ダム計画の問題、利賀川流域の地すべり問題を指摘するだけでなく、庄川の治水対策についても提起しています。
また、私は利賀ダム本体建設の再検討を求める会の世話人の1人として、何回も県の河川課の担当者の方々と懇談の機会を持ち、意見交換も行ってまいりました。
担当者は、それぞれの立場で頑張っておられます。治水の効果や地すべりについても、心配されています。
話の中で、道路の完成を目指し、予算を要望しているときに、ダム本体の建設について話を持ち出すわけにはいかないというふうに言われ、一理あるのかなとも思ったところであります。
県は県として、市は市として、また市長、議会、議員にはそれぞれの立場、役割があると考えます。
市としては、今は言えない、言いにくいことがあっても、住民の中には不安や懸念があるということを言わなければなりません。関係地方公共団体からなる検討の場において、利賀ダムに反対との声は聞こえてこないとか、上流住民の100%はダムを完成してほしいとの思いであるとの意見が載っています。
そういう人もあるとは思いますが、地すべりの懸念について解消されているのでしょうか。いろいろな意見があって当然と思いますが、利賀ダムの建設に関して、疑問や懸念があることを把握して意見を述べるべきと考えますが、見解を伺います。
私は、一日も早い取りつけ道路の完成を願うとともに、転流工工事や本体工事に入らない段階で、利賀ダム工事が終了するよう運動を進めていくことを述べて、質問を終わります。
市長(田中幹夫) 中島議員の質問についてお答えをいたします。
私からは、利賀ダムについての質問にお答えし、小・中学校の就学援助についての質問につきましては、教育委員会理事から答弁をいたします。
まず、利賀ダムについてでございます。
治水効果は河川整備計画で雄神地点で約10センチだ、これでも治水効果があると言えるのかということでございますが、庄川流域は過去に破堤による洪水被害が発生し、議員ご指摘の平成16年10月の台風23号では、一部地域で避難勧告が発令され、洪水による災害の発生防止や軽減が急務となっております。
庄川の治水は、庄川水系河川整備基本方針が平成19年7月に策定され、平成20年7月には基本方針を最終目標として、その整備の過程におけるおおむね30年後の途中段階の目標を定めた庄川水系河川整備計画が策定されております。
この計画では、堤防の安全を確保しながら、戦後最大洪水に相当する規模である毎秒4,200トンの洪水を計画高水位以下で安全に流下させることを目的とし、利賀ダムの整備と既存ダムの効果で200トンをカットして、河道配分流量を4,000トンとし、堤防の断面が不足している箇所の整備や橋梁のかけかえ等を実施する内容となっております。
庄川のような急流河川では、ダムにより河道内の水位を下げられることが庄川沿線の皆様の安全、安心にとって重要であると考えております。
なお、利賀ダム建設事業の効果は、これまで学識経験者などから構成された国の事業評価監視委員会や庄川流域懇談会において、ダム以外のさまざまな代替案と比較検討され、ダムによる治水対策案が最もすぐれているとされてきたところであります。
さらに、県と沿線の5市で構成された利賀ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場がこれまで2回開催され、現在国においてダムを含めた幅広い治水対策案などについて、予断を持たずに検討が進められているところであります。
市といたしましては、近年のゲリラ豪雨による災害が全国的に発生していることから、早期に検証を終え、ダムが一日も早く完成し、所期の目的が達成されるよう期待しているところでございます。
次に、地すべり対策に万全をとるよう国・県に働きかけよとのことですが、利賀ダム貯水池の周辺の地すべりにつきましては、国土交通省の指定区域と農林水産省の指定区域があり、現在も関係機関で調整が行われて情報が共有され、対策工事が進められているものと認識しております。
市といたしましては、今後も地すべり対策については、調査は慎重かつ十分に実施していただきたいと考えており、ダム貯水池の地すべり対策につきましては、国と県で十分協議されながら、利賀ダム工事事務所の調査が進められていくものと考えております。
また、市民の皆様の安全を担う立場から、万全の対策をとるよう強く要望しているところでございます。
次に、クマタカの調査はどのようになっているのかについてであります。
利賀ダム工事事務所によりますと、事業による影響が予想される4ペアについて、ことしの時点で数ペアの抱卵と繁殖が確認されております。
現在もクマタカの生息状況の確認及び生活環境調査が継続され、工事の実施に当たっては、工事の時期や実施方法について、有識者から助言を得ながら進めていると聞いております。
市といたしましても、猛禽類の保護、保全は大変重要なことと認識しており、万全を期すようお願いしているところでございます。
次に、住民の中に疑問、疑念があることを意見として述べよということでございますが、ダム建設地の利賀地域の方々は、下流沿線の皆様の安全、安心のために、建設される利賀ダムに対してご理解をされており、先祖代々引き継がれてきた家屋の移転や土地の買収にも応じられ、事業の促進にご協力をいただいております。
ダム建設による便益は、ダムより下流の洪水被害の軽減や利水供給などが主で、水没する地域には余りメリットがないのが一般的かと思いますが、利賀ダム建設の場合は、その工事用道路を完成後に国道471号のバイパスとして利用することで、水源地域全体の生活再建や地域活性化が図られるよう、国と県が工事用道路と国道471号利賀バイパスの合併施工に関する協定を結び、現在工事が進められているものであり、利賀地域にもメリットがあるものであります。
利賀地域の皆様にとりましては、長年の悲願でありました通行規制のない生活道路の早期確保に大きく期待する思いは当然でありますし、利賀ダムの完成により、下流域の洪水被害の防止が図れることも願っておられるところであります。
地すべり対策につきましては、先ほど申し上げましたが、現在も関係機関で調整が行われて、情報が共有され、対策工事が進められているものと認識しており、関係の皆様に十分理解されているものと思っています。
また、住民の皆様が抱いておられる不安や懸念は、今は言えないとか、言いにくいことではなく、むしろ積極的に国や県へ伝えるべきと考え、これまでも当然伝えてきておりますし、今後もその方針に変わりはありません。
このように、ダムと道路はそれぞれの効果や事業の進め方において、毎回申し上げておりますが、ダム本体と道路は一体のものであるという考えは、地域の方も含めた流域の皆様共通の認識と理解しているところであり、今後とも流域の関係者一丸となって、ダム建設促進に取り組む考えでございます。
教育委員会理事(永井巌) それでは、私のほうから、中島議員の質問についてお答えをいたします。
就学援助制度の概要については、議員のご質問にあったとおりですが、本年9月3日現在で、本市が認定している準要保護認定者数は、小学校では128人で児童の5.1%、中学校では95人、生徒の6.9%となっております。
市が独自に支給している援助費目としては、クラブ活動費と生徒会費、PTA会費があり、小・中学校ともに対象としています。
なお、それぞれ支給額の上限を設定しており、クラブ活動費は、小学校が2,680円、中学校が2万8,780円、生徒会費は小学生が4,440円、中学生が5,300円、PTA会費は小学生が3,290円、中学生が4,070円を支給の上限額として、実績によって支給しています。
なお、平成25年度の予算には、市単独の準要保護児童生徒就学援助費として、小学校で978万2,000円、中学校では1,306万5,000円を計上いたしております。
次に、準要保護の認定基準についてお答えいたします。
本市の認定基準については、世帯総所得額が生活保護基準額の1.2倍未満の者としています。県内の15市町村では、小矢部市が1.5倍としているほかは、1.0から1.2倍の範囲で基準を設定しています。
認定基準を1.2倍から1.5倍にした場合に、増加する認定者数と支給額については、これは本人の申請、承諾を得る必要があり、世帯の所得額の調査を行うことができないということから、現在把握することはできません。
準要保護の制度については、平成17年に国庫補助が廃止され、市単独事業として引き継がれたという経緯があります。
現在、1.2倍としている認定基準の変更や援助費目や支給単価については、適正な基準と考えており、今後とも維持していきたいと考えています。
次に、生活保護基準の引き下げに伴う対応等についてお答えします。
文部科学省は、生活保護基準の見直しに伴い、直接影響を受ける就学援助制度における学用品費等の支給について、生活保護基準の見直しによる影響を受けないよう、25年度当初に要保護者として就学援助を受けていた者で、引き続き特に困窮していると市町村が認めた世帯については、要保護者としての国庫補助申請を認める取り扱いとし、準用保護者については、国の取り組みを理解した上で、各自治体が判断する旨の対応を通知しています。
本市では、準用保護者の認定に当たって、前年度の生活保護基準を用いていることから、平成25年度については、影響がなく、対象者の変更はありません。
また、準要保護児童・生徒の就学援助費の復活、充実については、大変大切なことであり、全国都市教育長協議会から、毎年国に対して強く要望をしており、本年7月にも要望をしたところであります。