2013年(H25)6月市議会 一般質問 6月14日
◎志賀原発の活断層
◎介護保険事業
14番(中島満議員) 私は、まず志賀原発の活断層に関して伺います。
安倍政権は、原子力規制委員会が7月にも制定するとしている新安全基準をもとに原発再稼働を強行しようとしています。しかし、新安全基準骨子案は、福島原発事故の原因が究明されていないもとで、小手先のとりあえずの対策を並べただけのものであります。地震対策も原発の真下に活断層が走っていても、露頭・地表にあらわれた断層がなければ設置を認めるという骨抜きの内容とされています。
また、政府の地震調査研究推進本部でも、活断層の目安としている約40万年前以降を活断層と認定しているのに、原発の規制だけが12万年から13万年以降に活動したものだけを活断層だと定義しています。
もともと原発は、苛酷事故を想定した対策の実証実験を行うことが原理的にはできません。ですから、客観的な安全基準を設定すること自体が原理的に不可能です。安全な原発などあり得ません。新安全基準という新しい安全神話をてこに再稼働を強行しようとしている企てに厳しく反対すべきと考えますが、まず新安全基準についての見解を伺います。
そして、志賀原発と活断層についてであります。
昨年7月18日、経済産業省原子力安全保安院が北陸電力志賀原発の敷地内の断層が活断層かどうかを現地で再調査するよう指示しました。志賀原発1号機直下を走るS-1断層に関し、経済産業省原子力安全保安院の専門家会議で、これぞまさに典型的な活断層、よくこんなものが審査を通ったなとちょっとあきれている。電力会社の説明は、余りにも都合のいいように解釈しているのではないかとの声まで上がり、保安院は断層の再調査を指示したとのことです。
この断層は、志賀原発1号機の建設許可申請の際、既にその存在が確認されていたにもかかわらず、シーム断層は活動性が問題となるものではないとされたものです。どの専門家がどのような資料に基づいてそう判断したのか、詳細な経過は公開されていません。これを活断層でないと思っているとしたら、その人に委員を務める能力がないとの専門家の指摘も報道されています。
国は、原子炉など安全上重要な施設を活動層の上に設置することを認めていません。現地調査でS-1断層が活断層と確認されれば、志賀原発の運転はできず廃炉となります。北陸電力がこれまでの判断の経過と根拠を地質学者名も含めて明らかにするとともに、予断なく徹底的な再調査を行い、データや資料を全面的に公開するよう求めるべきと考えますが、見解を伺います。
また、富来川南岸断層についてであります。
志賀原発の北約9キロメートル付近に富来川南岸断層があります。昨年6月の安全保安院の地震・津波に関する意見聴取会に対する北陸電力の資料「富来川南岸断層の評価にかかわるデータ拡充のための追加調査について」では、東洋大学の渡辺満久教授と名古屋大学の鈴木康弘教授が中位断層面の高さが富来川右岸では20メートルに対し、富来川南方の沿岸域では四十数メートルであることなどから、富来川南岸断層は地形面形成以降に活動があったと推定される。富来川南岸断層は海域に連続する可能性があると指摘したのに対し、北陸電力は、富来川南岸断層については、文献調査、地形調査、トレンチ調査、表土剥ぎ調査、露頭調査、ボーリング調査を実施し、耐震設計上考慮する必要のない断層と評価、また海上音波調査などを実施し、同断層は海域に連続していないと評価しています。そして北陸電力は、原発に近い富来川南岸断層と敷地のすぐ東を走る福浦断層を消しているのです。
また、昨年10月から11月にかけて、石川県の原発問題に取り組む4団体が新潟大学の立石雅昭名誉教授と断層の調査を行いました。周辺地域の斜面から海の堆積物と見られる砂の土壌サンプルを採取し解析したところ、断層の北と南で海の堆積物が見つかった場所に極端な高度差が認められ、活断層の存在が強く疑われる結果を出したとしています。4団体では、富来川南岸断層の徹底調査が必要としています。特に渡辺教授は、北陸電力の海底調査データの分析から、断層は原発西側の海域まで続いている可能性があると指摘し、断層の長さは数十キロメートルにわたる可能性も指摘されています。
そこで、S-1断層とともに富来川南岸断層についても調査資料の公開、そして厳正な調査が必要と考えます。北陸電力はこれまでも企業利益のために重大な臨界事故を隠すなど、その隠蔽体質が厳しく指摘されてきました。政府に対しても原発推進組織から独立した機関で調査実施を求めるとともに、活断層の存在をなぜ見落としたのか、そしてその原因と責任を明らかにするよう求めるべきと考えますが、見解を伺います。
そして、邑知潟断層帯についても考えなければなりません。七尾市からかほく市にかけて走る邑知潟断層帯について、地質調査研究推進本部は、全体の長さは約44キロメートルで地震規模はマグニチュード7.6程度と指摘しています。しかし、北陸電力は3本の別々の短い断層とみなし、8キロメートルから渋々延ばしたものの、34キロメートル、マグニチュード7.4にとめています。
まさに志賀原発のすぐ東に福浦断層、その東から南にかけて44キロメートルにもわたる邑知潟断層、北に富来川南岸断層、そして南岸断層が西の海域に延長してあり、原発の直下にS-1断層と、四方と真下に活断層に囲まれているのが志賀原発であります。
原子力規制委員会の専門家チームが日本原子力発電敦賀原発や東北電力東通原発にある敷地内の断層が活断層の可能性が高いとする報告書案を示し、志賀原発についても現地調査が時期は未定ですが予定されています。
今、国民の関心は活断層に集まっていますが、活断層だけにこだわらず、原発の危険性を捉えることが必要です。志賀原発に関して活断層の問題を中心に取り上げましたが、原発事故は一たび放射性物質が大量に放出されると、その被害が空間的にも、時間的にも、社会的にも限定なしに広がり続け、人類はそれを防止する手段を持っていません。
また、使用済み核燃料、核のごみを安全に処理する技術もありません。原発稼働を続ける限り、処理する方法のない核のごみがふえ続けます。これ以上この危険な遺産を増やし続け、将来の世代に押しつけ続けることは許されません。全ての原発から直ちに撤退する政治決断を行い、即時原発ゼロの実現を図ること、原発再稼働方針を撤回し、全ての原発を停止させたままで廃炉のプロセスに入ること、そしてプルトニウム循環方式から即時撤退することが必要です。これの方針を国に迫るべきと考えますが、見解を伺います。
次に、介護保険事業に関してお伺いします。
昨年4月の改正介護保険法、改定介護報酬の実施から1年余りが経過しました。一連の制度の見直しは、生活援助の時間短縮を初めとする新たな利用制限や基幹的サービスの基本報酬の大幅な引き下げ、たん吸引など介護職員による医療行為容認など、利用者にとっても、事業所とそこで働く職員にとっても重大な影響をもたらすことが明らかとなっています。
改正された介護保険法は、地域包括ケアの実現と持続可能な制度の実現を掲げ、給付の効率化・重点化を太く打ち出しました。政府が実際に目指している地域包括ケアは、高齢者・国民の「最後は住みなれた自宅で」の願いを逆手にとり、利用者・患者の在宅への押し流しを徹底することによって公的給付をできるだけ削り込む安上がりの体制です。
生活援助の見直しは、これまでの30分以上60分未満、60分以上という時間区分が、20分以上45分未満と45分以上に再編され、介護報酬が2割近くも引き下げられました。この生活援助の時間短縮は、利用者・家族の生活に重大な影響をもたらしています。時間短縮による細切れ介護、駆け足介護は利用者との対話の機会を奪い、コミュニケーション労働という介護の本質にも逆行するものです。ヘルパーの生活援助は単なる家事代行とは違います。
そこで、今回の介護時間の短縮により利用者と話ができないため、変化を見落としてしまわないか不安というヘルパーの声があり、利用者はヘルパーが忙しそうで声をかけられないなどと言われています。この介護時間の短縮をどのように捉えているのか。また尊厳を保持し、その能力に応じ自立した日常生活を営むことができると掲げた介護保険法の理念に反する生活援助の時間短縮の見直しが必要と考えますが、見解を伺います。
また、介護報酬の改定は、総枠で1.2%の引き上げとされたものの、実質的にはマイナス改定となりました。介護職員処遇改善交付金が廃止され、介護報酬に組み込まれましたが、この交付金を介護報酬に換算すると2%強に相当するため、差し引き0.8%を超える引き下げであります。このことにより小規模事業所では、存続が危うくなるところも出る事態も生じています。抜本的な報酬の見直しを求める必要があると考えますが、見解を伺います。
また、一昨年の社会福祉士法及び介護福祉士法の改正によって、たんの吸引、経管栄養が介護職の業務として法律上容認されました。命を守る援助は医療・看護も同様ですが、医療・看護はあくまでも病気やけがの手当てをして健康の回復を図ることであって、その後の日常生活を支えるのはヘルパーの役割になります。
ヘルパーは生活支援のプロフェッショナルであって、医療・看護とは専門性が違います。生命の危機の状態では、医療・看護職が救命を行い、その後の生活危機においては、ヘルパーの生活支援が大きな力を発揮します。看護師にかわってヘルパーがたんの吸引や胃ろうの注入を行うことは、本来の仕事ではありません。自宅で生活をすることが日常であって、病気やけがで入院する状況は非日常です。日常が阻害された状況は緊急事態であり、できるだけ早く日常を取り戻すため、医療・看護が健康の回復を図ります。
本来なら、医療も介護もいつでもどこでも必要なだけ、お金の心配なく利用できる制度であるべきです。医療も介護も社会保障として国が責任を持ち、誰もが平等に保障される制度であれば、専門性を生かした役割分担と連携・共同が実現するはずです。
ところが、診療報酬も介護報酬も給付抑制だけを目的とした改悪を繰り返し、金の切れ目が命の切れ目になっています。自助や互助を強調し、きずなや助け合いを美化して、公助の責任を曖昧にしています。介護問題を個人の責任ではなく、社会問題として捉える視点と人権を守る視点が大切です。介護保険制度を憲法25条に基づき、国民の健康で文化的な生活を保障する方向に転換させることが必要です。
介護保険法改正前の一昨年12月議会で、介護職が対応せざるを得ない場合は、必要やむを得ない措置として位置づけ、行為の範囲、実施者を限定した上で安全確認などの環境整備を国の責任で十分行うことが必要とただしたのに対し、国では必要となる医療技術の習得など、介護職の技術レベルの向上を図り、登録研修機関で研修を義務づけるとしていました。事業所によっては、研修は受けたが対応はしていないというところもあります。現状はどのようになっているのか、また問題点がないのか見解をお伺いし、私の質問を終わります。
市長(田中幹夫) 中島議員の質問にお答えをいたします。
まず、志賀原発の活断層の質問でございますが、平成23年9月、そして昨年の6月にも議員からは志賀原発に関係する質問をお受けしておるところでございます。
今回の質問については、国が策定を進めている原子炉施設の新安全基準、志賀原子力発電所に関連する破砕帯や断層調査の情報開示、原子力発電所の再稼働や廃炉に関する国への対応や見解との質問だということでございます。
まず、原子力発電所の再稼働については、現在、法律上の権限と責任を有する国において、規制基準に基づき審査・判断され、適切に対処されるものと考えております。国が昨年7月に開催をした専門家による意見聴取会において、活断層の可能性の指摘がありました志賀原発敷地内の破砕帯に関しましては、北陸電力の調査結果が原子力規制委員会へ報告され、今後、国の判断が示されるものと考えております。
また、富来川南岸断層に関しましては、北陸電力により客観性、信頼性を高めるために追加調査が行われており、邑知潟断層帯に関しましては、平成24年6月の北陸電力調査報告に対しまして、同年9月の原子力保安院意見聴取会で特別な意見が出なかったと認識をしております。
今さら申し上げるまでもなく、原発の運転には安全確保と住民の理解が大前提でございます。今後とも調査と検証を行い、各種の安全対策に全力で取り組んでいただきますようお願いをするところでございます。
次に、介護保険事業についてお答えをいたします。
初めに、生活援助の時間短縮の見直しについてお答えをいたします。
平成23年度に厚生労働省が生活援助の提供体制に係る実態調査を行いました。生活援助のうち利用頻度の高い掃除、調理・配下膳-配膳と下げ膳でございますが-について、8割以上の方がサービス提供時間45分未満であり、利用者ごとのニーズに対応して効率的にサービスを提供することにより、利用者の利便性や負担に配慮するとともに、事業者においてはより多くの利用者へのサービス提供を可能にする観点から見直しを行ったものであると承知をしております。生活援助の時間短縮の見直しが必要とは考えておりません。
なお、議員のご指摘の利用者と話ができないため、変化を見逃してしまわないか不安であるとかヘルパーが忙しそうで声をかけられないという点につきましては、介護支援専門員による適切なアセスメントとケアマネジメントに基づいて、個々の利用者にとって適切な生活援助が提供されるものであると考えております。
次に、介護報酬の抜本的な見直しに関する質問にお答えをいたします。
政府において、地域包括ケアシステムを支える介護人材の安定的な確保のため、平成24年度介護報酬改定において介護職員処遇改善加算を創設し、介護職員処遇改善交付金と同様の処遇改善にかかわる取り組みを行うこととしたものと承知しています。
議員ご指摘のとおり、介護職員処遇改善交付金は、介護報酬に換算すると2%分に相当しますが、全体でプラス1.2%の改定率になった背景には、過去3年間の物価下落分等も反映していると承知しており、抜本的な報酬の見直しの必要があるとは考えておりません。
次に、介護職のたんの吸引や経管栄養などの業務に関する質問にお答えをいたします。
現在、市内の特別養護老人ホームでは、口腔内のたんの吸引を行える認定証を交付された者は224人でございます。実際に口腔内の吸引を必要とする入居者は20人となっております。看護職員の配置等の医療提供体制が十分でない現状において、医療の処置が必要な要介護者が増加しているため、介護職員との連携・共同による医療的ケアはやむを得ないものであり、認定研修を受けていない職員が夜勤を行う場合、認定者の応援体制がとれるような勤務の組み合わせをして対応しております。
また、市内9カ所の訪問看護事業所でたんの吸引の研修を受けたヘルパーは1名のみとなっており、実際にたんの吸引を実施している事業所は現在ありません。
今後の研修受講については、3事業所で計画をしておりますが、4事業所が未定、2事業所が受講予定なしとなっております。県が実施している研修は年間50名の定員であり、希望者全てに対応できないことや講義50時間のほか、演習・実地研修等があり、介護職員不足の中で研修を受講するのは、現場業務に支障なく遂行する上では難しい状況もあるようでございます。
いずれにしろ施設等に対しては、医師・看護師等による連携など、利用者及び介護職員の双方に安心なケアを提供できる体制を確保するよう指導しているところであり、今後もより一層安全な介護サービスの実施に向けて取り組んでまいりたいと考えております。