2013年(H25)3月市議会 一般質問 3月8日
◎発達障害児の教育条件の改善
◎学校図書館司書の配置
14番(中島満議員) 私はまず、障がいのある子供たちの教育条件の改善についてお伺いします。
我が国では、障がいのある子供たちの教育のために特別支援学校、小中学校の特別支援学級、通常の学級から週1回程度通う通級指導教室という主に3つの特別な場が設けられております。
特別支援教育とは、従来、知的なおくれや目が不自由な子供たちなどを対象にしてきた障がい児教育に加え、知的発達におくれはないものの学習や行動、社会生活面で困難を抱えている児童生徒にもきちんと対応していこうという教育であります。すなわち、気になる子供たち全てにきちんと対応していこうという教育で、平成19年4月から完全実施されました。
文部科学省の資料では、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室の対象児童生徒の推移は合計数において平成8年から18年までの間に2倍近く増加しております。
通級指導教室の対象者は、平成3年から18年までの間に4.2倍以上となっています。通級指導教室というのはあくまでも在籍する通常の学級の児童生徒で、おおむね知的障がいを伴わない可能性が高く、発達障がいのある児童生徒と重なると考えられます。
平成14年2月から3月にかけて文部科学省が委嘱した全国実態調査の結果では、知的発達におくれはないものの、学習面や行動面で著しい困難を示す発達障がいのある児童生徒の割合は6.3%在籍していることが明らかとなりました。そして、昨年12月5日、2月から3月にかけての調査では6.5%と推定されると発表しました。
この6.5%という数字は、40人学級では2、3人、30人学級では1人から2人在籍している可能性があり、特別な教育的支援を必要とする児童生徒がどの学級にも在籍しているということであります。
なお、小学校では7.7%、中学校では4.0%で、学年が進むごとに割合は低下したとしています。このうちの約6割の子供は、座席の位置や宿題の工夫、個別指導などの支援を受けていたが、4割近くが特別な支援を受けていなかったとしています。
現行の特別支援教育体制は、平成19年に発達障がいの子供を新たに特別な教育の対象に加えて発足しました。発達障がいは、LD、学習障がい、ADHD、注意欠陥多動性障がい、高機能自閉症、知的障がいを伴わない自閉症などといった一連の症状の総称です。
この体制の発足に当たり、教室や施設の整備、教職員の確保など、新体制を万全なものとして出発させるべきでした。しかし、実際には政治の責任は放棄され、既存の人的・物的資源で対応するなどとして、必要な予算と人員は確保されませんでした。
特別支援教育の場で学ぶ子供たちが急増しているのは、一方では子供の条件に合った教育を願う保護者の期待に沿った結果でありますが、同時に、急増の背景に社会のゆがみがあります。全国一斉学力テスト体制など行き過ぎた競争と子供を追い立てる教育改革は、丁寧な支援を必要とする子供たちに手をかけられない状態を恒常化し、結果としてそういう子供たちが通常の学級にいづらくなる状況をつくってきました。また、貧困の広がりなどによって精神的に不安定な子供がふえていることも背景にあります。
こうした子供たちをしっかり支えることこそ政治と社会の責任です。障がいがある子供の教育は、その子供の成長・発達する権利を保障するためのものです。障がいのある人々が社会の構成員として自分らしく生きていく権利を保障されるためにも不可欠であります。
そこで、何点かお伺いします。
特別支援学校は従来、盲学校、聾学校、各種養護学校に分かれていたものを平成19年4月から複数の障がい種を対象とする特別支援学校に一本化されました。1学級当たりの人数は6人、平均3人と配慮されております。
そこで、市内の特別支援学校の現状はどのようになっているかを伺います。
また、特別支援学級についてであります。
特別支援学級は、従来は法律上特殊学級と言われたものです。この学級は、障がいの種別ごとの少人数学級で、障がいのある子供一人一人に応じた教育を行います。知的障がい、肢体不自由など7種に分けられ、法律上は1学級最大8人ですが、担任1人では無理があります。
特別支援学級の在籍児はこの10年の間で約2倍になっています。同時に、従来多かった知的障がいの子供に加え、対人関係をうまく結べない情緒障がいや発達障がいの子供、障がいの重い子供など障がいの状況が多様になっております。
ところが、学級編成基準はこの19年間変わらず、従来のように丁寧な教育ができなくなっております。子供の増加と障がいの多様化に見合った条件整備が必要です。
そこで、市内の特別支援学級の小中学校の在籍者数と学級数など、現状はどのようになっているかを伺います。
また、通級指導教室についてであります。
通級指導教室は、小中学校の子供たちがほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障害がい状況などに応じて特別な指導を受けるために通う場です。従来の言語障がいや難聴などに加えて、六十数万人と推計されるLD、ADHD、高機能自閉症などの子供を指導する場として位置づけられています。また、さまざまな事情から特別な支援が必要な子供を受けとめ指導する上でも貴重な場です。
しかし、国は通級指導教室に関する整備計画も、通級する子供何人に教員1人をつけるのかの教員配置基準も持っていません。通級指導教室の設置状況は、その地域が特別支援教育に本気で取り組んでいるのかどうかの一つのバロメーターと言われています。21年度から市内でも通級による指導が始まりましたが、指導者が幾つもの学級を兼務していないのか、そして現状はどのようになっているかを伺います。
発達障がいは親のしつけや愛情不足、家庭環境のせいではなく、生まれつきの脳機能障がいであり、完治はしませんが、早く手だてをとることによって軽くすることはできます。早く対応することにより、大人になってからの社会的な適応障がいを防ぐこともできます。
発達障がいやそうではないかと思われる子供の保護者が気軽に相談でき、同じ悩みを抱える者同士が交流できる仕組みも大切だと思います。また、子供と常に向き合っている保育士、教員、保護者が発達障がいに早く気づき、適切な対応をするための学習と研修の機会も大切です。
教育機関のみならず、福祉、医療、労働などさまざまな関係機関との連携、協力が必要と考えますが、見解を伺います。
次に、学校図書館司書の配置についてお伺いします。
本は、人がその人生の中で得た知識を他の人間に、また次代の人間に伝える力を持ちます。本を読んだ人間は、読むことによって先人が何年も何十年もかけて獲得した知識や感情を文字や記号を通して短時間に得ることができます。
人は、知識を得るためだけでなく感情を得るためにも本を読みます。本を読み、さまざまな感情を知り感性を豊かにしていくことは、人間の成長にとって極めて重要なことです。この意味で、人は本を読む必要があるし、特に子供は必要です。楽しい、おもしろい、悲しい本を子供にはたくさん読ませなければなりません。
昭和25年に図書館法が公布されました。戦前、政府は図書館を国民教化、思想善導の機関として活用し、国民に自由な読書を保障しませんでした。
しかし、図書館法は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価も徴収してはならないと無料の原則を明らかにするとともに、図書館の設置は自治体の意思によるものとすることや、国による義務づけを排しました。そして、運営に当たっては地域の実情や住民の要求に応じて展開することを求めました。このことは地方分権主義に立ったものであります。
利用者の求める資料を必ず提供する機関としての図書館には、資料と図書館員と施設が必要であります。この三者を図書館の三要素といい、どれが欠けても図書館ではありません。この三者の図書館運営に対する貢献度は、資料が20%、図書館員が75%、施設が5%と言われています。
学校司書のいる学校図書館の生徒児童たちは資料の使い方、探し方を一つ一つ覚えていき、その力は一生自分のものとなります。
今、子供たちの読書離れが急速に進んでいると言われます。その原因を、本を読まない子供たちの側にあると考えている間は解決できません。多くの子供たちがすぐれた本を手にすることなく読書の楽しみやすばらしさを知らずに大人になっていくとしたら、とても残念なことであります。
子供が本離れしているのではなく、学校教育や社会のあり方が子供を本から遠ざけ、本を読まない生活を強いているのだと言えます。
市内の小中学校では、10年くらい前から学校図書館司書が順次配置され、現在18校に10名の学校司書が勤務しています。しかし、市の小学校は週1回3から12時間、中学校は週に2から12時間という配置状況です。ちなみに、城端小学校では月水金の週3日に9時から12時までの週9時間、城端中学校では水曜日8時30分から12時30分、金曜日が12時30分から16時30分で週8時間の配置となっています。
一方、近隣の砺波市では1校に1名の学校司書を1日6時間、週30時間配置し、小矢部市でも昨年度から1校1名、1日4時間、週20時間を全ての小中学校に配置しました。そして、新年度からは勤務時間の延長も検討するとしています。
図書館に常時人がいなければ、図書館の三要素から考えても図書館とは言えず、単なる部屋としての図書室に過ぎません。
図書館司書は、図書館員の倫理綱領でその役割を、資料を知り、利用者を知り、その両者を結びつける技量を持つことの重要性をみずから指摘した専門的職種であります。
市内の全ての小中学校に学校図書館司書を1校ごとに専任配置すべきと考えますが、見解をお伺いし、私の質問を終わります。
市長(田中幹夫) 中島議員の質問にお答えをいたします。
私からは、発達障がい児の教育条件の改善についてお答えをし、学校図書館司書の配置については教育委員会理事から答弁をいたします。
まず、発達障がい児の教育環境等に関する質問でございますが、市内にあるとなみ総合支援学校の現状について申し上げますと、小学部は知的障がい学級と肢体不自由学級合わせて10学級、中学部は6学級あります。
1学級の児童生徒数は、軽度から中度の障がいは1名から6名で、重度の障がいは1名から3名で編成されています。教員については軽度から中度の障がいは1学級に1名から2名、重度の障がいは学年の枠を取り払い、児童生徒3名につき2名が配置されております。
教科により、担当する教員の数も違う場合があります。例えば、自立活動など細かく指導したい教科は多人数の教員が指導に当たっております。
次に、市内の特別支援学級の現状についてですが、小学校では知的障がい、自閉症・情緒障がい、難聴、言語障がい、弱視の5種別で16学級に47名の児童が在籍しております。中学校では知的障がい、自閉症・情緒障がい、難聴の3種別で9学級に24名の生徒が在籍しています。
小中学校ともに自閉症・情緒障がいの児童生徒数が増加する傾向にあり、それに伴い毎年県教育委員会との間で開級について協議を行っております。
次に、通級指導教室の現状についてでございます。現在、小学校4校で40名の児童が学習障がいの程度により週1時間から4時間、通級指導教室で学習をしております。通級指導を受け持つ教員は市内に3名おり、そのうち1名は児童数の関係で2校兼務となっております。
来年度に向けては、新しく通級指導教室の開設を希望している学校もあるため、引き続き県教育委員会へ開設を要望しています。
次に、関係機関との連携、協力についてでございます。保護者の方が気軽に相談できる場として市の教育センターでは子育て全般に関する相談会として教育相談のつどいを実施しています。また、障がい児教育の専門家が多くいる富山県総合教育センター教育相談部への紹介も随時行っております。
また、砺波広域圏わらび学園から、市内の保育園や幼稚園に直接訪問をいただき、保育士や保護者への支援をしていただいております。
交流の場といたしましては、昨年4月に親の会「つぶらなひとみなんと」が結成されました。保護者の方が悩みを相談し合い、子育てについて勉強する場として活用されていると伺っております。
研修の機会といたしまして、小中学校の特別支援教育担当者に対しては、従来から県の総合教育センターで研修が実施されております。保育士に対しても県でハートフル保育研修を行うようになりました。
今年度、教育委員会では民生部子育て支援室と合同で保護者、教員を対象に児童発達支援研修会を開催いたしました。就労を見据えた支援について大変有意義な講演をしていただきました。
昨年5月には、南砺市における児童発達支援のための相談体制の構築や発達支援ネットワークの構築を目的とした南砺市児童発達支援専門委員会を設置したところでございます。市の職員のほか、富山大学や特別支援学校の教員、さらには保護者の皆様にも委員になっていただき、連携をとりながら児童発達支援事業を進めているところでございます。
教育委員会理事(永井巌) 私からは学校図書館司書の配置についての質問にお答えをいたします。議員ご指摘のとおり、読書は子供たちにとって想像力や考える習慣を身につけ、豊かな感性や思いやりの心を育む上で大切な営みであり、人としてよりよく生きる力を育むために欠くことのできないものであると認識をいたしております。
教育委員会では、昨年3月に南砺市子ども読書活動推進計画(第2次計画)を策定し、子供の自主的な読書活動の推進に取り組んでいるところであります。
市では現在、学校の図書館に臨時職員、図書館司書助手というふうに呼んでおりますが、その10名を全小中学校に週1日から3日間、配置をしております。司書助手は図書の整理や配列などの環境整備のほか貸し出しや返却の手続、新刊図書の紹介、子供や教師の要望に沿った資料の提供などを行っております。
また、ほとんどの小中学校には司書教諭の資格を持つ教諭が配置されておりますので、図書館司書助手と協力しながら図書館を活用した読書活動、子供が運営する図書委員会への指導などを行っております。
子供たちの読書活動を推進するためには学校図書館における人的な配置も重要ですが、学校としての取り組みも重要だと考えております。
各学校では、登校後10分程度を朝読書の時間に充てております。また、小学校の中には毎週一、二回ボランティアグループによる読み聞かせ活動が行われている学校もあります。本を多く借りた児童や読書冊数の目標数を達成した児童を表彰している学校もあります。このほかにも学校図書館を利用しやすくするため、図書館の飾りつけや新刊本の紹介などさまざまな工夫を凝らしています。
これからも各学校においてさまざまな取り組みや工夫を取り入れ、市内全小中学校の読書活動の推進につなげたいと思っております。
議員からは、学校ごとに図書館司書を専任配置すべきでないかというご指摘ですが、市といたしましては現在の人員配置の中で司書助手と司書教諭が中心となり、図書館の蔵書の充実や読書環境の整備に努めるとともに学校全体で読書活動が推進されるよう、今後とも指導してまいりたいと思っております。